大阪地方裁判所 昭和40年(モ)1715号 決定
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔決定理由〕仍て考えるに、<書証>によると申請人が姜熈沢に対し申請人主張の確定判決に基く債権を有すること、姜熈沢は昭和四〇年四月六日布施市上小坂町二丁目五六の一に於て死亡したこと、同人の遺産として同人の池田開発株式会社に対する八〇万円の池田カンツリークラブ入会金返還債権の存することが疎明される。而して<書証>によると同人の国籍は韓国、本籍並に出生地は共に全羅北道沃講郡県面大政里であることが疎明されるから、同人の相続関係については法例二五条によりその本国法たる大韓民国民法によるべきものと解されるところ、<書証>によると、同人の外国人登録原票には家族の記載が全くなく、又同人の住所地である大阪市東成区内には同人の家族の配給籍も見当らずその家族関係は全く不明であることが疎明され、これによる同人の同国民法所定の相続人(戸主相続並に財産相続を含め)は不分明の状感にあるといわねばならない。
而して相続人不明の遺産に関する法律関係を相続に関する法律関係とみる説もあるが、むしろ無主の財産の処理の問題として財産法に関する法律関係とみるのが相当であり、従つてこれについては法例一〇条の精神に則り財産所在地法たる民法がその準拠法であると解される。而して民法によると相続人不分明の相続財産は法人とみなされ、又これについて利害関係人の請求があれば家庭裁判所による相続財産管理人の選任が可能であると考えられるが、<書証>によると最近何人かが右姜熈沢の池田開発株式会社に対するカンツリークラブ会員の名義を変更せんとしているものがあり若し右名義変更がなされると申請人の前記債権に対する強制執行が著るしく困難となる恐れのあることが疎明されるところ、右相続財産管理人選任の方法によるときは、同管理人が選任せられてから少くとも四ケ月間は相続財産に対する強制執行をなし得ないのであつて、この間に右名義の変更がなされる恐れがないとはいえない。
仍て民事訴訟法第五六条第五八条に則り主文の通り決定する。 (林義一)